第二十章

10月半ば。
羊は孤独だった。

夜中に布団の中で突然目覚め、水道から水を飲み、窓を開ける。
外はシトシトとした雨が降っていた。

わずか数ヶ月だが、この寮に来てから羊は恐ろしいほど多くのものを失っていることに気が付いた。

次の朝、眠い目を擦って、パソコンに向かう。
高校のホームページを開くと、そこに向かってやおら書き始めた。

拝啓

私、1年N組27番、羊は本日を持ちまして貴校を退学致します。
宜しく哀愁!

学校へ退学願いを送付すると、気分は幾分すっきりした。

カーテンを開くと、外は曇っていた。

昔のガールフレンドに電話を掛けてみる。
しかしもちろん、その電話は繋がらない。携帯電話は死んでいた。

扉を開けて、外へ出る。

下の部屋に向かうと、ハルキンは留守だった。

ポンの部屋に向かうが、ノックをしても反応がない。

傭兵の部屋には鍵が掛かっていた。

松原真も不在のようだ。ノックをしても、静寂だけが空間を支配していた。

羊は、クラブCAVEへ通ずる、扉をこっそりと開ける。

アルコールの腐敗したにおいが鼻元を掠める。

木製の重い扉を尻で開けると、暗闇が広がっていた。

羊は適当な場所がないか、しばらくその場を探る。

ちょうどアンプに繋がっていたコードをひっぱり
トイレの扉に引っ掛けた。

輪を作り、そこに首を突っ込む。

そして一言発すると、全体重をそこに乗せた。

「アーメン」

羊は死んだ。