オレとアカハゲが初めて出会ったのは、同じ大学のスウェーデンだかノルウェイだかの金持ちの息子が主催したホームパーティーでだった。 郊外のアパートを一棟まるまる借り切って、フロアの壁を三つもぶち抜いた巨大な部屋には、何かで正体をなくした若者が100人ばかし歌ったり踊ったりしながら、何かが起こるのを待っていた。
「なんかしんきくせーな」話しかけてきたのはアカハゲだった。
「そうだな。街にでも繰り出すか?」そういうオレの方こそ、目は澱んで、髪は精気を失っていた。毎晩続くパーティーに疲れていたのだ。実際この頃の上海は経済的な発展とともに、オレらみたいなのは元より、本物のディレッタントが世界中から集まっていて、いつ終わるともないパーティーに毎晩興じていた。
なんとかタクシーを拾って街中へやる途中、2人ともしたたか酔っぱらっていたせいもあって、名前も知らないのにお互いのことをよくしゃべった。生まれたところや、好きな食べ物、嫌いな映画や馬鹿だと思う教師のことなど。
「俺のことはピエールって呼んでくれよ。最初はそんな風に呼ばれる嫌な気もしたもんだが」アカハゲは言った。
「ピエールのどこが嫌なんだ?」
「いや、別に」
「実際ピエールっていうよりは、アカハゲって感じだな」
「AKAHAGE?」
「a Red bald, it means」
このあと我々は初めての殴り合いをして、タクシーからほっぽり出されて、ほど近くにあったローソンに入ってビールを4本買って、それを飲みながら歩いた。そして、茂名南路のDKDバーに入ると、2階にいたアカハゲの知り合いにスピードを分けてもらって、2人で朝まで踊り狂った。

洗いたてのシーツみたいな光が、路地に落ちている煙草の吸殻や空きビンを照らしている。
オレとアカハゲはアカハゲが持っていた最後の一本のジョイント吸いながら、淮海中路を歩いていた。ちょうど大学の寮まで10分という距離になって、アカハゲが不意に言った。
「一緒に住まねえか」
「はい?」
アカハゲはちびたジョイントを指を焦がすほどギリギリまで吸うと、ヘドロがたまっている排水に向かって投げ捨てた。 吸殻はクルクルと弧を描いて、黒々とした堆積にぶつかると音もたてずに消えた。
「だからさ、この大学の寮を出て、俺と暮らさないか?実際、カスばっかりだろ。」アカハゲは、変な誤解を招かないよう、かなりマッチョなキャラを演じていた。それがかえってゲイっぽく写ってて、オレは「その気はないぜ」と言ってしまい、二日酔いの頭をスウェーしながら二度目の殴り合いをすることとなった。