☆006

 それは突然起こる。 ビアサーバーがビールを出す機能に致命的な痛手を被る。 
 新しいビアサーバーを業者が取り付ける。新旧が交代された。
 
 結果として、オレは決定的に損なわれた。 オレが、だ。
 二度とビアサーバーは一万円の価値を吐き出さなくなった。 オレという才能を十分に活かしきるためには、あの古いビアサーバーがどうしても必要だったらしい。

 「 味が変わったな 」 新しく常連になったばかりの貿易会社で働く男は言う。 オレは、んなこたあ、わかってんだよこの猿野郎、と心の中で毒づきながら、内心とても心配している。