第十三話 もうアカンかも

病状は最近悪化の一途。このままではボクが仕事を辞める日が訪れるのは必至。眠れないのだ。

インソムニア

不眠症の恐ろしいところは昼間に眠くなることだ。結局、目を開けていられないほどの眠気で午前中のボクは机の上で睡魔と闘い、エネルギーの80%を消費してしまう。それでもボクは仕事に行く。とにかく、行くのだ。それが無意味なことだと分かっていても。

酒量は日々増えていき、一昨日、昨日、今日でボクは焼酎を4リットル飲み、フルボトルワインを2本開け、500MLのビールを30本は飲んだ。日本酒の量が最近顕著に増えてきて、ボクは毎朝恐ろしい頭痛と吐き気を催しながら、仕事へ向かう。
その間、精神安定剤を常用しているし、日常的にやり続けて今じゃ通常の量の3倍は摂取しているそれも朝からだ。

肝臓は肋骨を押し上げるほど腫れ上がり、目は充血し、日常的に手が震える。ボクが廃人になるまでにはそれほどの時間を必要としないだろう。

髭も剃らなくなったし、寝癖がついていても放っておく。幸い体質からか太らないので、ルックス的には全くわからない所がミソだ。友人の一人としてボクの変化に気が付いてはいない。

こんな状態で生きていて、一体何だってんだ?
そもそもこれで生きていると言えるのだろうか?
朝は起きる。セックスフレンドが毎朝電話をくれるから辛うじて起きられる。しかし会社では廃人同様だ。机につっぷして寝るどころか、気が付くと椅子の上で意識を失っていることが最近多くなってきた。

フラッシュバックは頻繁にボクを襲い、会社のトイレでソラナックスを5錠噛み砕き、30分震えているなんてざらだ。

下手に大企業に働いているボクには潤沢な資金があり、それはすべて現実逃避に投下される。費用対効果でいったらトントン。ボクは仕事はできるほうだし、周りは誰もそれに気が付いていない。東京砂漠。

一体、いつからこんなに人生が狂ってしまったのだろうか?やはりMとの4年の日々が終わったからか?はたまたKとの自堕落な10年がボクをそうしてしまったのだろうか?いやいや、やはりYとの洗練された日々を失ったからだろうか?彼女達はこんな風になってしまったボクをどう思っているのだろうか?

ボクはいま自分を痛めつけている。罰している。鞭打っている。誠実な対人関係をすべて無視してセルフィッシュに活動してきたツケが回ってきたのだ。意識をかき消して、幻想の世界でいまこのキーボードをたたき続けているが、ボクが死んだ後、一体何が残るだろうか?

ボクは、自分で生涯の幕を閉じるしかないのかもしれない。

友達が一昨日、こんなメールを書いてきた。
「ゴールなんてないんだよ。なんでお前はゴールを必至で目指すんだ?」

I don't know、これがボクの素直な答え。

ゴール、確実なゴールは、死だ。俺たちの中で唯一無二に確実なことと言ったら、死だけだ。

酩酊した意識は無意味な言葉を羅列している。もう意識が途切れる。

アデュ

みんな必死に生きてくれ。これでボクはけっこう幸せなんだ。幸せなんだ。

愛もなく、夢もなく、言葉もなく、信頼や真実や喜びや同情や、そんなそんな。

そんな。