桜の咲く頃に、うなぎ

彼女と初めて食べた料理はうなぎだった。
なぜうなぎだったかというと、そこが上野で、手ごろな値段で食べられる“我々にとって”初デートに相応しい飯は、うなぎ位なものだったからであるというのが、ボクの意見だ。ボクは今でもそう信じているが―――― あの年頃にしては、ハイカラな選択肢であるように思えた、のはボクの勝手な解釈だろうか?

3月24日。その日は朝から降っていた霧雨が止んで、空には分厚い雲が並んでいた。ボクは彼女の到来を今か今かと改札で待つ、上野駅。(信じられないことだが)遅刻してきた彼女が改札から出たとき、同僚の女の子は愛しい人になっていた。

ボクらは一くさりアメ横のごちゃごちゃしたところを歩くと、目に入ったうなぎ屋に入りうな丼とひつまぶしを食べ、写真を一枚撮った。メニューを両手に持って写真用の顔を作っている、写真が携帯電話に残っているから、嫌でも思い出す。消すことができない。


ところで、ボクがうなぎ屋の息子だと知った時、はたして彼女はどう思っただろう?興味深い質問だが、答えてくれる人はいまは別の男と情事しているようだ。ファザコンの気があったから、まず年上だろう。それもうん、と歳の離れた男だろう。

さて、ボクらはそのあまり瀟洒と呼べなくもない普通のうなぎ屋を出ると、ひょっこり顔を出したといった感じの桜をひやかして、写真を何枚か撮り(彼女が撮った桜は今でもメモリーに残っている)、美術館にたどり着いた。
そしてそこに並ぶ長蛇の列にうんざりしながらも、モネを見た。

クロード・モネ
絵について語るのは非常に危険だが、ここは町田康に勇気付けてもらい
へらへらぼっちゃん」風に「東京飄然」を模写してみたいと思う。
そして次で〆ます。

なぜこんなことを急に書くかというと、ボクは何年か振りに本気なのです。
本気で、手に入れたくなったのです。
本気で、手に、入れたく、なったの、です。

そしてその気持ちの激しく動く様を形に残したかった。
こんな激しい情熱が自分に残っていたことに何より自分が驚くし、ボクは全神経全細胞が叫ぶ声が聞こえます。GET BACK!と。








・・・・・こんなオレを恨むかね?