第二話 新しいガールフレンド

と言うのもガールがいなかったからに違いない、とちょうど一ヶ月前、ほぼ睡眠障害発症と時期を共にしてガールフレンドと別れていたことに、ボクは思い当たったのである。ある晩に。

考えてみるとボクはここ10年間女性が傍にいなかった時期がなかった。
別にここで、オレも若い頃はもてたんだぜ、へへん、とつまらぬ優越感を誇示したいわけではないのだが、まあ、結果的から言うと単にラッキーだっただけだろうな、と思っている。
つまり自分は運が良かった。
肥沃な大地に恵まれていたメソポタミヤの民を思ってくれると間違いないと思う。
ボクの恋愛は周期的に安定していて、別れればすぐに次が見つかり、別れたことを後悔すれば、すぐさまそれは手中に戻ってきていた。
運が良かったのだ、と改めて思う。

しかし状況は一変した。
ここ2005年に来て、10年来の飢饉が発生したのである。ガールがいない!

通例であれば、文句なく楽しめる女性達が次々と姿を消し、二度とは戻ってこなかった。それはボクに嵐の前の渡り鳥を思わせた。彼女達は何かを嗅ぎつけて、ボクの周りを去ったのだ。
その何かとは・・・・、と考えたのだが、この時点はまだわからなかった。

そんな風にガール達が離れていってしまったこともあって、自分はその後けっこう色々なところをチョコマカと歩き回り、愛を探してみたのだけど、この一ヶ月、空振り三振どころかバッターボックスに立てないことがほとんどであった。それはさながら、ってまぁ、もういいか。

なんと、女性と接すると臆してしまうのである。心の病故に。
そうそう、そう。精神がとことん朽ち果てているのだ、ボクは。

「あ!そうか、それならガール達の失踪も頷けるというものだ、なるほどね」と、自分が一人になってしまう図式に納得のいく解答を与えると、当たり前だが、深く溜息を付くしかなかった。

ああ、ああ、ああ。

と、過ごすこと一ヶ月。

新しいガールフレンドが出来た。
ほやほやである。

病気は著しく好転したかに見えたが・・・。