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「あなたはきっとできる人」
布原はお礼だといって彼女をワタミに招待した。
なけなしの金で、烏賊の一夜干、ししゃも、セロリの漬物などを注文し、飲めない酒で乾杯。二人はすぐに心打ち解け、身の上、行く末などを語っているうちに、時子の手は自然と布原の手を握っていた。
 
時子の話
 
麻宮時子 19歳神奈川県出身。父親は東証2部の中堅建設会社の次長で、横浜に一軒家を持っている。
13歳のときに母親を亡くし、家族の面倒を見ながら地元の公立高校を卒業しスーパーで働いていた。
時子の言葉を借りると、連続21連勤で深夜のシフトをこなしていた時、朦朧とする意識の中でコーンの神のお告げが聞こえた。
「お前の伴侶が代々木にいるから会いに行け。男は病んでいる。すぐにわかる」
時子はエプロンを投げ捨てると、その足で東海道線に飛び乗って代々木駅前で昏倒している布原を見つけた。